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「気候変動問題・SDGsに対する生活者意識調査」2021年春

目次

 

株式会社メンバーズでは、気候変動問題やSDGsに対する生活者の意識や購買行動を把握し、企業のマーケティング戦略立案の参考にすることを目的に、昨年度に続き、国内の20代から60代の男女 1,107名を対象に、Webアンケート調査を実施(2021年2月)しています。今回は、当社提言と調査結果の一部をご紹介します。

先行する世界各国に続き、日本も2020年10月、2050年のカーボンニュートラル宣言を行いました。2021年4月には、米国主催で開催された気候サミットで、EUや米国、日本も含めて、2030年の温室効果ガス削減目標が掲げられています。
脱炭素社会社会の実現とい共通目標の達成に向けて、世界各国が主導権争いを続ける中、国内の生活者意識はどう変化し、マーケティングの視点から、企業はどの様なコミュニケーションやプロモーションが求められているのか、調査結果を通してお伝えします。

 

<調査結果からの提言>
  • 生活者の地球温暖化・SDGsに対する関心は高まり、脱炭素社会に向けた本格的な消費行動に移行している
  • 企業はこれまでの年齢・性別に応じたマーケティングから、価値観や行動、ニーズに合わせたきめ細かな対応が求められる
  • 生活者は企業の地球温暖化やSDGsの取り組みに対応する商品・サービスを求めており、企業はそれに応じたコミュニケーションが重要になる

以下、具体的な回答結果と併せて、ご参照ください。

1.年代・性別問わず、地球温暖化への関心は高まる → ほぼ全ての層で、関心層は半数を超える

 生活者の地球温暖化への意識は非常に高い結果となりました。これまでの調査では、Z世代と呼ばれる20代の若年層や50代以上のシニア層がその傾向が高い結果となっていましたが、今回の調査では、性別・年齢層問わず、「ほぼ全ての層で半数以上が関心の持つ」結果となりました。

Q:地球温暖化問題に関心はありますか?(n=1,107)
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20210525_sdgs_survey_02さらに、全回答者数のうち、地球温暖化関心層(61%、n=679)を対象に、普段の行動や購買行動などの結果から分析を行いました。
これまでのマーケティングでは、対象となるターゲット層をF1層、M1層といった性別や年代別にセグメンテーションし、それらセグメントに応じた施策を行ってきました。しかし、地球温暖化が世界共通で最も重要な社会課題の一つに認識され、生活者の関心も高まる中、もはや従来のマーケティング戦略は通用せず、今後は、生活者意識や行動分析に応じたきめ細かなアプローチが必要であると言えます。
20210525_sdgs_survey_03<各セグメント抽出の際の条件>
  • アクティビスト層:ボランティア参加や自らがSNSでSDGsや地球温暖化に関して情報の起点となり行動する層。主として20~30代前半の層が多い
  • 若者SOCIAL:GOOD層 20~30代前半で、地球温暖化を深刻な問題と捉え、積極的に行動する層
  • 育児母親ロハス層:20代~40代前半の女性で子育てをしている母親、普段の生活で環境配慮型の商品選択や行動を行う層
  • エシカル生活者層:年齢を問わず、普段の生活で環境配慮型の商品選択や行動を行う層
  • 中高年懺悔層:50代以上で、地球温暖化を深刻な問題と捉える層
  • 高収入高関心層:世帯年収1,000万以上で、普段の生活で環境配慮型の商品選択や行動を行う層
  • ビジネスSDGs層:年齢を問わず、会社としてSDGsの取り組みは開始され地球温暖化問題にも関心を持つ層
  • あきらめ悲観層:年齢を問わず、地球温暖化問題に関心を持ち深刻な問題と考えるが、個人の行動は無意味であると考える層

2.SDGsや地球温暖化対策の訴求は重要な購買因子となる → 年齢層、世帯年収が高いほどその傾向は高まる

 本調査では、上記の地球温暖化への関心の他、地球温暖化対策やSDGs達成に寄与する商品(以下、エシカル商品)の購入意向を設問に設けています。何れの回答結果も年齢層・世帯年収が高いほどその傾向が高まる結果となりました。
シニア層を対象とした商品や高額商品のマーケティングでは、重要な因子になると考えられます。

左より:Q:地球温暖化問題に関心がありますか? Q:SDGsや地球温暖化問題を意識し、それに寄与する商品やサービスを選びますか? (いずれもn=1,107)
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 3.気候変動を意識した取り組みはより本質的な行動へ → 手軽なエコ活動からエネルギーの転換へ

本調査では、SDGsの認知層(n=486)を対象として、「普段の生活で取り入れていること」、「今後の取り組みたいと考えていること」の設問を設けました。アンケートでは、以下選択肢を設け複数項目を選択しています。

<選択肢>
・マイボトルやエコバッグ、再利用可能な保存容器の利用
・ゴミの分別、なるべくゴミを出さない、過剰包装を避ける
・ハイブリッド車・電気自動車の利用
・消費期限の近い商品を購入するなどフードロスを意識して行動している
・無駄なものを買わない
・所持品のリユース、リサイクル
・寄付、募金活動への参加
・フェアトレード商品の購入
・自動車や自転車などのシェアリングサービス
・自宅で太陽光パネルなどを使った再エネルギー発電を行う
・知人、友人とSDGsに関する話をすることがある
・再生可能エネルギー(太陽光発電、水力発電など)の電力会社への乗り換え
・ジェンダーやフェミニズムに関する勉強
・企業が、SDGsや環境に配慮した取組を行っているか調べる
・自分が購入・利用している商品が、SDGsに関連しているか調べる
・SDGsや環境に配慮した企業や金融商品への投資
・ボランティア活動やNPO活動をしている、参加している
・SNSで、SDGsに関連した取組を行っている団体に「いいね」している
・SNSで、SDGsに関することを自ら投稿、発信している
・SNSで、そういった活動をシェアしている

Q:気候変動を意識して、普段の生活で取り入れていることは何ですか?(n=486、複数回答)
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Q:気候変動を意識して、今後の取り組みたいと考えていることは何ですか?(n=486、複数回答)
20210525_sdgs_survey_06日常の取り組みとして、マイバックやマイボトルの持参、ゴミの分別などのエコ活動を実施する人が多い半面、今後取り組みたいものとして、ガソリン車からハイブリッド車やEVへの乗り換え、再エネ由来の電力会社への切り替えなど、エネルギーの転換に関わる内容が1位、2を占める結果となりました。

温室効果ガス削減の理解が深まり、気候変動対策の本質的な行動を選択する消費者意識が明確となりました。

 4.半数以上がエシカル商品の購入意向をもつ → 購買に至らない要因は企業のコミュニケーション

 生活者のエシカル商品の購入意向は、以下結果の通り、全体の半数以上が「積極的に購入したいと思う」、「購入したいと思う」と回答しています。一方で、そうした商品を意識して実際に購入している層は、17%に留まることが把握できました。

さらに、エシカル商品を意識していたにも関わらず、商品を購入していない層の購入に至らなかった理由は、「具体的な商品・サービスがわからないから」、「どのような企業がそうした取り組みをしているかわからないから」などが上位を占める結果となりました。

エシカル商品の購買を後押しし、生活者のニーズに応える企業側のプロモーションやコミュニケーションが求められていると言えます。

Q:SDGsや地球温暖化問題に取り組む企業の商品やサービスを積極的に購入したいと思いますか?(n=1,107)
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Q6:SDGsや地球温暖化問題を寄与する商品購入や、サービスを利用しなかったのはなぜですか?(n=563)
20210525_sdgs_survey_08<調査実施概要>
  • 調査手法:Webアンケート調査
  • 回答者:20歳以上の男女(調査会社パネル)
  • サンプル数:1,107(性別 × 各年代均等割付〔20代~60代以上〕)
  • 実施時期:2021年2月15日~18日
全ての設問の回答結果は、こちらのページ(メンバーズ ニュースリリース)からご覧いただけます。ぜひ、ご覧ください。
メンバーズでは、今後も継続してこうした調査を実施し、皆さまのマーケティング支援を行います。

 

執筆者紹介

萩谷 衞厚

株式会社メンバーズ
EMC推進室 Social Good Company編集長
人間中心設計(HCD)スペシャリスト
日本マーケティング学会会員 サステナブル・マーケティング研究会 事務局

新卒入社の外資系コンピューター会社を経て、2000年より、コールセンター・CRMコンサルティング・ファーム 株式会社 テレフォニー(現 株式会社 TREE)に在籍。コールセンター構築や顧客戦略のコンサルティング業務に関わりながら、2007年以降は、環境映像Webメディア Green TV Japanの立上げ・運営に従事。メディア運営と併せて、経済産業省や環境省、文部科学省の環境に関連する政府広報や省庁プロジェクトに関わる。 前職の事業譲渡に伴い、2015年5月より、株式会社 メンバーズの100%子会社 株式会社 エンゲージメント・ファーストに在籍。Shared Value Agency®として、大手企業を中心に、様々なCSV推進プロジェクトに関わり、現在に至る。 茨城県日立市出身、人間中心設計(HCD)スペシャリスト、日本マーケティング学会会員 『UX × Biz Book 顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン』(共著)

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