お話を聞いたのは、この方!
天野 一記
アートディレクターとして長年デジタル広告業界に従事。自社事業担当になったきっかけからUXリサーチ・デザイン領域をスタートさせ、現在はサービスやプロダクトのデザインを担当。
天野さんをよく知る上司の杉浦 英明さんにも取材しました
新たなサービスを開発し続けるトヨタコネクティッドのUXリサーチャーとして抜擢されたワケ
まず、トヨタコネクティッドさまの支援が始まった経緯を教えてください。
杉浦:はじめに、トヨタコネクティッドさまの説明をしますね。トヨタ自動車といえば車を製造して販売するイメージですが、トヨタコネクティッドさまは「ITで顧客接点を創ること」をミッションにしたコネクティッドサービスを開発・提供しています。トヨタコネクティッドのビジネスそのものが、DXにあたるモノのサービス化といえると思います。
メンバーズのご支援が始まったきっかけは、当時トヨタコネクティッドさまのGMだった方が過去にメンバーズと繋がりを持っていたというのがご縁でした。新規事業を立ち上げる中で、システムに強いSlerだけではなく柔軟に共創できる新たなパートナー企業を探されており、メンバーズに声をかけてくださいました。当社はWebの運用に強みを持っていますが、顧客成果にコミットしていくミッション・ビジョンに期待を持ってくださったことがきっかけですね。
初期は、私ともう1名のメンバーでご支援をさせていただきましたが、これからはモノを作ってどんどん検証しアップデートする仕組みが必要という発想の中で、UXの考え方が非常に適しているという話になりました。そこから今につながるUXのプロジェクトがはじまっています。
現在、メンバーズが支援しているのは何名ですか?
杉浦:現在20名ほどで支援しています。さまざまなプロジェクトが存在しますが、主にデータ解析やUXリサーチ系の開発に携わっています。
業務経験が豊富な人材が求められる中で、天野さんを筆頭に付加価値の高い人材がそろっています。メンバーズはWebの運用に強いという特徴がありますが、それだけではなくプロダクト開発やサービスデザインの領域でも価値を認めていただき支援領域を拡大しています。
業務経験が豊富な人材が求められる中で、天野さんが抜擢された理由を教えてください。
杉浦:UXプロジェクトは、これまでもトヨタコネクティッドさまが自分たちなりのUXを作ってこられましたが、そこをさらにブーストさせるためにUXの知見者である天野さんに入っていただきました。
先方からUXができる・英語が話せる・大人数のプロジェクトの中でうまくファシリテーションや推進ができる等の非常に高い要望があり、UX領域で経験のある人材として白羽の矢が立ったのが天野さんでした。
天野さんが現在行っている業務内容を教えてください。
天野:UXリサーチャーとして携わっています。現在はサービス開発、少し前まではユーザーのデータからファクトを分析し、セグメントやジャーニーマップの作成、チームメンバーとのアイデア出し、具体的なディレクトリ構造を考えていました。
メンバーは日本だけで150名ほど、そこにUSやヨーロッパ支社の方もいる非常に大規模なプロジェクトで、UIデザイナーやエンジニアなどさまざまな方と一緒に仕事をしています。
天野さんは、サービスデザインや車載機のUXデザインに携わっているのですよね?
天野:そうですね。先日まで、車載機とよばれる車のコックピットのデザインに携わっていました。車に乗り込んで体験を分析したり、マルチメディアとよばれるナビを中心とした仕組みを考えたり、それに付随するユーザーの声を分析しました。
今はモビリティを軸としたサービス開発を担当しています。これまではコックピット中心の体験設計でしたが、現在はサービス開発に近いですね。
天野さん自身は、これまではWebサイトのUXデザインをされてきたのでしょうか?
天野:いえ、これまでもサービス開発の仕事をしてきましたね。前職では、Web以外のデジタル全般の広告企画を作ったり、UXリサーチをして自社サービスのアプリや商材開発からサービスデザインまで、色んなことを全てやってきました。なので、今回トヨタコネクティッドさまの支援で急にWeb周りからサービスデザインをすることになったというわけではないんです。
UXデザインのフローはデジタルも自動車も同じなのでしょうか?例えば、自動車のプロトタイプを作るのは、デジタルよりも大変そうだなと思ったりしますが…。
天野:基本は一緒ですが、車の開発用に歩み寄ってやり方を変えています。デジタルでは企画開発のときからエンジニアさんと会話することを大切にしており、今もそれは変わらず車のエンジニアさんと会話して作り上げています。ただ、話す言葉も内容もこれまでとは違っていたり、製造業ならではの考え方もあるので、そこはすり合わせるよう努力しています。
先ほども話にあがったようにとにかく規模感が大きいので、色んなプロトタイプを試しては作り直していますね。さまざまなメンバーがいるので、デザインから入る方や情報設計から入っていく方、さまざまな角度からたくさんの方が関わって作りあげています。
UXデザインって顧客体験を向上させるだけじゃないんです
大規模なプロジェクトで正解がない世界の中、議論が割れることはありますか?
天野:「割れる」ということはそんなにないのですが、正解はユーザーと作るものという感覚が皆にあるのかなと思ってます。UXのいいところはユーザーが起点なので、判断軸はユーザーになります。このユーザーだったらこれはいるよね・いらないよねという議論になり、自分の体験をそれぞれ持ってくることはありますが、最終的には作ったものへのユーザー評価がゲートなので、プロジェクトメンバーのみの意見に左右されることがないような設計になっています。
今回のプロジェクトの成果として、開発費用の削減もあったと聞いています。なぜそのような二次成果が生まれたのでしょうか?
杉浦:これまでプロダクト開発者が考えたものをそのまま作っていたのを、UXアプローチを使うことで、ある程度事前にリサーチして直すべき点を抽出し、アップデートをかけることができます。なので、開発してからの手戻りを極力なくすことができ、コスト削減につながっています。
現在はVRでプロトタイプを作ることも始めていて、いままではモノを作って評価していたのがデジタル上で作って評価できるので、かなりのコストダウンになっています。そういった新しい試みにチャレンジするメンバーズの姿勢を、お客さまから評価いただいていますね。
大規模プロジェクトを推進する中でのこだわりと若手UX人材の育成
求められる業務レベルが高い中で、壁にぶつかった経験はありましたか?
天野:業務自体は大変とは思っていないですが、大勢のメンバーがいる中で自分が何をやっていくのかを考えていくことは大変です。なので、自分で「これをやります、あれをやります」と積極的に提案していく姿勢を大切にしていますね。最初は「必要ない」と思われても、何とか提案していってタイミングが来たら喜ばれることがあると思っていて。色んな方の力を借りながら提案型で切り込んでいくことは、パワーがいりますね(笑)。
UXをブーストさせることを求められる中で、天野さんが意識していることは何ですか?
天野:これまではアートディレクターとして、自分でじっくり考えてから人を動かすことが多く、積極的に会議の場で議論して決定することをあまりやってこなかったのですが、今はそこをやるようになりました。「次の会議で何を話そう」とか「その場の会話を聞き取って何を提案しよう」と考えることを、新しいチャレンジとして意識して取り組んでいますね。
色んなことにトライされていると思うのですが、チームとしてのナレッジ蓄積はどうお考えですか?
杉浦:今は人に対してナレッジが紐づく部分もありますが、チーム内で若いUX人材の育成や、お客さまも含めてデジタルのナレッジを培っていこうと考えています。トヨタコネクティッドさま側も業務的なナレッジを蓄積されているので、メンバーズとトヨタコネクティッドさまが持つそれぞれ強み・得意領域を持続的に成長させています。
天野:トヨタ自体がプロセスを標準化することを非常に意識している会社なので、日頃からプロセスを残す文化なんですね。私自身もいままでプロセス作りは意識して実践してきたので、自分が関わらなくなった時にも他の人に引き継げるようになっているかと思います。当社のメンバーにもそういう文化が根付いていると感じます。
若手の育成という話もありましたが、実際にどんなことをやっていらっしゃるのでしょうか?
天野:前期から社内向けUX勉強会の講師をしていて、今期は新卒社員向け講座を週1×10回ほど開催しています。UXに関する本や記事は世の中にたくさんあるのですが、私も最初はわからずやっていたように、見よう見まねでやってしまうのが非常にもったいないと思っています。なので、講座内では座学だけではなく、実際にワークを通じて絶対に抑えるべきポイントを伝えることが意識しています。
天野さんに続くUX人材がぞくぞくと育つのが楽しみですね!今回はお話ありがとうございました。
今回のお話をまとめると・・・
<編集後記>
「教えて!メンバーズ」の第11弾は、いかがでしたか?メンバーズ内でも、難易度の高いチャレンジを続けるトヨタコネクティッドさま案件ですが、「未来だなあ…」とワクワクするような取り組みをたくさん聞くことができました。
メンバーズでも新しい支援領域であるプロダクト開発やサービスデザイン、経験豊富な天野さんやぐんぐん成長中の若手社員の活躍がこれからも楽しみです!
※この記事は2022年以前にメンバーズコラムに掲載していた記事のアーカイブです。