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脱炭素時代におけるサステナビリティ情報訴求の有効性~CSVサーベイ 2021年秋

目次

 

生活者の気候変動へ意識は高まる。

配慮型商品の購入は3割に留まるも、購入者の継続購入意向は96%を示す。

気候変動と企業コミュニケーションに関する生活者意識調査<CSVサーベイ 2021年秋>

2020年10月の日本政府による2050年のカーボンニュートラル宣言、アメリカのバイデン政権の誕生により、世界の脱炭素社会実現に向けた動きは加速化しています。併せて、2020年初頭からの世界的な新型コロナウイルスによるパンデミックは、社会課題への関心をより高めることになりました。

こうした中、当社では2016年から継続して、社会課題に関する生活者の意識調査を実施しています。2019年以降は、社会課題を気候変動に絞り、生活者意識や生活者の購買行動を把握し、企業のマーケティング戦略立案の参考データとして活用頂いています。

本コラムでは、将来の脱炭素社会実現に向けて、地球温暖化や気候変動に対する生活者の意識や理解、また、企業に求める気候変動対策やコミュニケーションのあり方を調査結果を通して、当社からの提言をお伝えします。

関心・理解の高さと年齢層との関係性とは?

生活者の気候変動への関心は高まり、関心や理解の高さと年齢層の高さは比例する
 
 
 
 
ほぼ全て(20代 男性以外)層で関心層は半数を占め、全体の63%が関心があると回答しています。2019年9月に実施した同様の調査と比較し、関心層は14ポイントのアップとなりました。

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また、今回の調査では、気候変動の理解度を把握するため、以下5つの問いかけをしました。

問1:最近の地球の平均気温は上昇トレンドにある
問2:地球温暖化の最も大きな原因は太陽活動の活発化である
問3:CO2排出を減らすことは地球温暖化対策に有効である
問4:脱炭素とはCO2などの温室効果ガスの排出を抑えることである
問5:ペットボトルやレジ袋の使用と気候変動問題は関係ない

皆さんも考えてみてください。今回のコラムにアクセスしていただいた皆さんであれば、少し簡単な問題に感じるかもしれませんね。今回の調査結果の正答率は以下結果となりました。

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各設問の正解と簡単な解説をまとめていますので、併せてご覧ください。
 
 
問1→〇 気候は上昇トレンドにあり、ここ100年の地球の平均気温は急激に上昇しています。
問2→× 地球温暖化の要因は人間の活動により排出された温室効果ガスが増え、大気中のCO2濃度が上昇したことは疑う余地はないとされています。
問3→〇
問4→〇
問2の解説の通り、温室効果ガスの排出を抑えることが対策として求められています。日本も含めて、すでに120ヶ国以上が、将来の温室効果ガスの排出実質ゼロ(脱炭素、カーボンニュートラル)を目標に掲げ動き出しています。
問5→× ペットボトルやレジ袋は一般的にプラスチックから作られており、その原材料は石油となります。石油を消費することは、大量のCO2を排出することになるため、気候変動問題と大いに関係しています。またペットボトルやレジ袋は海洋プラスチック問題という新たな環境問題も引き起こしています。
冒頭の関心度合いと理解度合いとを年代別・家族構成別に分析した結果は以下の通りとなります。
 
 

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年代別では、年齢層の高さと関心度・理解度は全て比例し、家族構成別では、未婚よりも既婚世帯、子供なしよりも子供あり世帯の方が関心度・理解度ともに高まる結果となりました。関心の高まりは理解の深まりにもつながっていることが明確になりました。

また、20代半ばまでのZ世代と呼ばれる層は、社会課題への関心が高いことで知られています。しかし、当社の調査では、若者層は関心層と無関心層の2極化が激しく、全体傾向として、シニア層の方が気候変動への関心がより高く、ここ数年はその傾向が継続しています。

マーケティング施策に有効な気候変動対策商品とは?

~趣味・嗜好性の高い商品ほど気候変動配慮の訴求は、マーケティング施策としても有効である
次に、生活者の気候変動対応商品の購入意向や購入の実態を見てみましょう。
気候変動に対応する商品の購買意向と実際に購入した層、そして購入者の今後の継続意向の結果は以下の通りとなります。

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商品の購入には前向きに姿勢(67%)を示すものの、過去半年以内に購入した層は、全体の3割程度に留まります。しかし、ここで注目すべきは、約3割を占める商品購入者のほとんど(96%)が継続して商品を購入する意向を示していることでしょう。

商品選択の要素として気候変動対応商品はすべての生活者に広く行きわたるパワーは持ち合わせてはいないものの、一度でも商品を購入した生活者に対するLTVへの寄与は大きいと言えます。つまり、商品やサービスの訴求軸が気候変動対策であることは、マーケティング上も効果的であると言えそうです。

また今回の調査では、商品購入の意向を探る上で、商品を4つのカテゴリー(日用品、食料品、家電・電子機器、ファッション関連)に分け、商品性の違いを把握しています。

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わずかな差ではありますが、購入意向が最も低いファッション関連(63%)は、購入実態も最も低い(19.3%)結果でしたが、継続購入意向(とても思う:60.6%)や友人・知人への推奨(薦めた・話した:38.9%)が最も高いのもファッション関連商品となりました。

スーパーやコンビニなど、どこでも手軽に入手することができる日用品・食料品と比べ、自分の好みが反映されこだわりを持って選ばれるファッション関連商品が、継続購入意向、友人・知人への推奨でいずれも高い傾向を示す興味深い結果となりました。

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生活者が求める企業の気候変動対応とは?

~気候変動に配慮した商品提供は生活者のニーズであり、より本質的な取り組みを企業に求めている
商品提供に際し、気候変動に配慮した取り組み13項目に対しての生活者の意向を把握しています。もっとも支持を得た上位5項目は以下の内容となります。

1位:過剰包装を避ける、環境に配慮した容器の使用
2位:リサイクル素材など環境に配慮した原材料の使用
3位:長期間使用可能な商品開発、修理・メンテナンスへ対応
4位:再生可能エネルギーによる製造・開発
5位:デジタル活用による不要なモノの廃止

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キャンペーンやプロモーションなどの普及啓発、寄付活動などと比べ、温室効果ガスの排出削減に直接的に寄与する取り組みが上位を占める結果となりました。

脱炭素社会の実現に向けて、生活者の関心や理解は高まり、企業の気候変動対策もより本質的な内容を求める傾向にあります。
 

まとめ

  • 気候変動に対する生活者の関心・理解は高まっている
  • 趣味・嗜好性が高く、こだわりを持って選ばれる商品と気候変動対策との親和性は高くビジネス成果につながりやすい
  • 気候変動に配慮した商品提供は生活者のニーズであり、CO2排出削減につながる本質的な取り組みを企業に求めている
 
【調査実施概要】

実施時期:2021年9月1日~9月3日
調査手法:Webアンケート調査
回答者:20歳以上の男女(調査会社パネル)
サンプル数:1,118、性別 × 各年代(20代~60代以上)
調査協力・アドバイザー:駒澤大学 青木 茂樹教授、県立広島大学大学院 江戸 克栄教授

 

 

すべての設問と回答結果は、以下ページよりダウンロードの上、詳細内容をご覧ください。

気候変動と企業コミュニケーションに関する生活者意識調査(CSVサーベイ2021年10月)
全29ページ
ダウンロードページはこちら 20211213_csv_survey_08

 

執筆者紹介

萩谷 衞厚

株式会社メンバーズ
EMC推進室 Social Good Company編集長
人間中心設計(HCD)スペシャリスト
日本マーケティング学会会員 サステナブル・マーケティング研究会 事務局

新卒入社の外資系コンピューター会社を経て、2000年より、コールセンター・CRMコンサルティング・ファーム 株式会社 テレフォニー(現 株式会社 TREE)に在籍。コールセンター構築や顧客戦略のコンサルティング業務に関わりながら、2007年以降は、環境映像Webメディア Green TV Japanの立上げ・運営に従事。メディア運営と併せて、経済産業省や環境省、文部科学省の環境に関連する政府広報や省庁プロジェクトに関わる。 前職の事業譲渡に伴い、2015年5月より、株式会社 メンバーズの100%子会社 株式会社 エンゲージメント・ファーストに在籍。Shared Value Agency®として、大手企業を中心に、様々なCSV推進プロジェクトに関わり、現在に至る。 茨城県日立市出身、人間中心設計(HCD)スペシャリスト、日本マーケティング学会会員 『UX × Biz Book 顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン』(共著)

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