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内製化における成功の鍵-リスキリングと体制構築-【新潮デジタル広告#002】

デジタル広告運用の新しい潮流に焦点をあてる連載【新潮デジタル広告】、第1回のコラムでは、デジタル広告内製化の概要と事例に焦点を当てて説明しました。また、内製化を目指す上でのポイントとメリットやデメリットについても紹介しました。

内製化推進には体制構築や成果の創出・改善を伴走する内製化支援企業とパートナーシップを組むことが成功へとつながります。

「第1回:デジタル広告運用の内製化とは?」はこちらから

第2回の本コラムでは、デジタル広告内製化を成功するうえで大切な体制構築、なかでも社員の育成に着目し、社内のスキル育成(リスキリング)をどのように行い、どのような体制を構築するべきか、その手法とベストプラクティスに迫ります。

目次

デジタル広告運用を内製化するうえでの体制課題

デジタル広告運用の内製化を検討するとき、最初に上がる課題は「社内での体制構築とリソースの確保」です。デジタルの市場規模は年々拡大している一方、デジタル人材の不足は顕著で、業界全体の課題にもなっています。

デジタル広告運用のスキルセットは多岐にわたり、専門人材の採用や社内育成だけでは困難なケースがほとんどです。また、一度専門的なスキルを習得しても、その社員が退職・異動することにより体制を維持できなくなるリスクもあります。そのため個人のスキルレベルに依存する属人的な体制ではなく、スキル習得の平準化と運用品質を担保できる体制作りが必要です。

内製化における理想的な体制

メンバーズでは広告運用体制を段階的に、3つに分類しています。
    1. 広告代理店へ運用を委託する「アウトソース型」
    2. 一部の商品・媒体のみの広告運用を内製化する「一部インハウス型」
    3. パートナーと協力しながら運用をすべて自社でおこなう「協創インハウス型」 
アウトソース型での運用体制は、広告運用で取得したデータやナレッジが代理店の中で蓄積されてしまう(ベンダーロック状態)ことや、企業側で運用品質や代理店対応の妥当性を判断しづらくなります。そのため、改善スピードや柔軟性が、代理店に依存してしまう傾向にあります。

また、一部の媒体や商材のみを内製化する「一部インハウス型」は社内リソースによって業務量を調整できるため、運用管理としてバランスをとれます。しかし、代理店と自社で広告出稿をすることで、両者を競合とみなし入札の重複(カニバリゼーション)が起こる可能性があり、成果が悪化することもあります。

1、2の課題を解消し「完全内製化型」の体制を構築しても、アウトソース型の課題は解消される一方で、トレンドやアドテクなどの最新情報の取得に大きな課題が残ります。デジタル技術は常にアップデートされていますが、「完全内製化体制」は代理店などから情報共有がされないため、閉鎖的な運用環境(情報のガラパゴス化)に陥ってしまう可能性が高いです。

また前述したとおり、急な体制変更が起きた際の品質維持ができなくなってしまうため、可変拡張的なパートナー関係を構築した「協創インハウス型」がデジタル広告運用を内製化していくためには推奨されます。

段階的に社内にマーケティング機能を構築する
続いて内製化体制を構築する際に必要になる社員のスキル育成についてのポイントを紹介します。

デジタル広告運用内製化に必要なスキルとリスキリングのポイント

リスキリングのポイントとして、あらかじめ目標とするスキルレベルを定め、そのスキル定義に合わせて評価(外部アセスメント)をおこなうことが重要です。リスキリングの手法はOJTとOFF-JTによる実務型成長型モデルを採用することが大切です。それぞれの内容については以下の通りです。

OJTとOFF-JTによる実務成長型モデル図

広告運用に必要なスキル定義と計画の策定

広告運用業務のなかでも担当者に求められる役割は多岐にわたります。それぞれの役割は以下の通りです。

広告運用の役割
職制 役割
運用オペレーター 広告運用の入稿作業などを担当。
広告プランナー 広告配信の成果に対して、改善施策を検討。
ディレクター 広告施策の全体を推進。
プロデューサー 広告施策の企画責任者。
デザイナー 広告バナーやLPのデザインと制作を担当。
クリエイティブディレクター 広告配信に必要な制作の進行管理と推進を担当。

 

役割に応じて必要とされるスキルを定義することが効率的なリスキリングには不可欠です。また、到達目標を策定することにもつながり、成長を実感しやすいでしょう。本人の成長を通じて、モチベーションを維持しやすいこともメリットの一つです。

スキル定義の例
スキル Google検索広告の場合
Lv.1 各ツールから、配信結果などのデータ出力と、フォーマットに沿ったレポート集計ができる。
上位レベルのメンバーからの指示を受け、入稿や設定ができる。
Lv.2 Google社の推奨設定に沿ったオペレーターへの指示と、チェックでの品質管理ができる。
管理画面の仕組みと推奨設定を理解し、課題の把握と対策の判断ができる。
Lv.3 Lv.2に加えて、コンバージョンタグやリマーケティングタグを適切に設定できる。
最新のアップデート情報を取り入れるなど、広告トレンドのインプット方法を確立している。
Lv.4 広告管理画面でのデータにとどまらず、Google Analyticsと連携したレポーティングができる。
または、スクリプト機能などを利用し、広告運用の生産性を向上させる施策を進行できる。
(どちらか一つを満たしている)
Lv.5 Lv.4の両方を満たしている。
先端領域を常にキャッチアップし、施策に取り入れている。

リスキリング方法

効果的にリスキリングをおこなうには、OJTとOFF-JTをサイクルで回すことが大切です。まず座学でレクチャー会を実施し、運用担当者が広告知識を習得し、それらを実業務で実践します。その結果を踏まえて、フィードバックやワークショップを行い、振り返りの機会を作ります。

これらをセットでおこなうことで運用者自身がアウトプットの機会をつくることを重視します。実際の業務を通じて学んだことを実践することで、知識の習熟度を可視化しやすくなります。

実務を通したPDCAサイクル図
例えば、Google広告の推奨設定や進捗判断方法をレクチャーした場合、その後1週間ほどは運用の進捗報告をしてもらい、壁打ち相手としてフィードバックします。また、その際に思考として足りないところを可視化し、補強するための座学を企画してフォローする、というサイクルができてくるとスキルや知識が定着しやすくなります。        

運用体制の平準化に必要なこと

これまで内製化に必要なリスキリングのポイントを紹介してきましたが、せっかく丁寧に育成を行っていても、実際の運用体制が個人のスキルに依存した(属人化)状態だと、社員が退職・異動することで体制が維持できなくなるケースがあります。

そのため中長期では、「いかに広告運用体制を平準化させるか」が重要です。ここからは属人化しない体制作りに必要なことを紹介します。

ドキュメントの整備、運用作業の自動化

属人化を防ぐには、担当者のスキルに依存する業務を極力減らすことが重要です。

そのために媒体情報や運用のセオリーなどのレクチャー資料以外に、作業ごとにマニュアルと作業フォーマットを準備することが必要です。それぞれの業務をおこなう際にできるだけ担当者の判断を必要とせず、機械的に作業できることが属人化防止には大切です。

また、レポート出力やデータ整理などそもそもスキルが必要ない作業については、外部ツールや「Google Apps Script」などのローコードプラットフォームを利用してシステム化することで、ミス防止と作業の効率化を実現できます。

レクチャー資料、レクチャー動画の保存

育成フローを平準化させることも、属人化防止には不可欠です。

スキルや知識が必要とされる業務は、担当者が変更・追加になった際に育成の業務が発生します。その際、育成の内容を担当者に任せてしまうと、内容の抜け漏れや自己流でのレクチャーになり、新しい担当者を十分育成ができない場合もあります。

それらを防止するために、レクチャーで使用した資料や動画を保存しておくことが重要です。過去の育成資料を利用することで新しく担当者が入った際も、同じレベルで引き継ぎやスキルの育成が可能です。


レクチャー会の資料やプランニングドキュメント・広告入稿シートなど、資料を保存することで育成と実際の運用を標準化する

デジタル広告の内製化を成功させるには品質を担保するための体制づくりが大切です。リスク回避の観点からパートナーと協力して「協創インハウス型」の体制構築を進めることで、最新技術を取り入れつつ自社内でのPDCA運用が可能です。

業務遂行、リスキリングともに属人化のリスクを軽減することが大切で、業務内容の平準化やマニュアル作成を通じて、担当者が変わっても同じ品質水準の教育を受けられる環境をつくることが重要となります。

執筆者紹介

成田 理央

2021年に株式会社メンバーズに入社し、全社を横断したサービスプランニング室にてサービス開発と社内のマーケティング系人材の育成を担当。大手運送会社さまをはじめとする複数企業にて広告運用、メディアプランニング、運用型広告の改善、サービス開発など幅広い分野の業務に携わる。2022年より広告内製化支援事業のサービス立ち上げを経て、2024年にフォーアドカンパニーに参画。

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